ようやく日本語版ハリーポッターと謎のプリンスを読み終わりました。
片付けもあまり終わってないながら、図書館からの予約本お知らせに喜び勇んで借りに行きましたとも。はは。
内容的にはだいたい英語版を読んだのとたまらずサイトさんを回ったのとで知ってはいましたが、やはり日本語で一気に読むと、すごいです。くぅ、やられた。
そこで自分なりに感想と、7巻への予想を。
少し長いですので興味のある方は続きからどうぞ。
片付けもあまり終わってないながら、図書館からの予約本お知らせに喜び勇んで借りに行きましたとも。はは。
内容的にはだいたい英語版を読んだのとたまらずサイトさんを回ったのとで知ってはいましたが、やはり日本語で一気に読むと、すごいです。くぅ、やられた。
そこで自分なりに感想と、7巻への予想を。
少し長いですので興味のある方は続きからどうぞ。
■まず、6巻の特徴を・・・
・ハリーはシリウスの死にひどく落ち込んでいる
・スネイプ先生の「破れぬ誓い」
・ダンブルドアは登場時から何やら傷を抱えている様子
・マルフォイの不審な行動
・魔法薬学にスラグホーン先生就任、DADAにスネイプ先生就任(ついに!)
・「半純血のプリンス」の教科書
・ダンブルドアの個人授業にて、ヴォルデモートの生い立ちや少年期を知るハリー
・ジニーとの恋
・ホークラックス(分霊箱)の存在と謎
・そしてダンブルドアの死の夜・・・
盛りだくさんな印象ですが、4・5巻に比べハリーはとても精神的に成長した印象です。特にラストシーン近くではもう守ってくれる大人がいないこと、いてはいけない(一人で立たなくてはならない)ことを悟り、戦うことを決意しています。
謎の多い巻でもあり、7巻へとつながる重要な巻。ここで出てきた謎はとても多く、伏線もおそらくいっぱいでしょう。
■人物考察1 ~ハリー・ポッター~
まずもって大人になったね、ハリー…! ならざるを得なかったというのが正しいかもしれません。身近な人の死があまりにも多いハリーは、「普通のしあわせ」を感じてもらいたい人物トップです。
今回、彼はクイディッチのキャプテンに選ばれています。ここでハーマイオニーの台詞
以下、ハリーがこれまでヴォルデモードと対決してきたことやそのたびに生き残ったこと、5巻において魔法省の迫害にも耐え抜いたこと、更にハリーの背が高くなったことを指摘するシーン、かなり好きです。暑くなるハリーと隣のロンの反応も可愛い。
彼女はかなり他の二人よりも早熟ですから、自意識の低いハリーにずばっと言ってのけることができるのでしょうね。かっこいい!しかし彼女の口からこんなにはっきりハリーの魅力が語られたのにはびっくりしました。それだけハリーに対して友達意識が強いってことでしょうかね。そんなことロンには言えないもんね。
ロンはロンでクリスマスの頃の態度はひどすぎます。ハー子可哀想…
そしてハリーとジニーの恋はなんか唐突だなあという印象でした。でもだってジニーさん、他の男の子と今までめっちゃいちゃついてましたやん!「糊付けされたように」って表現に思わず笑ってしまった。でもまあ美人だという話だし、可愛くて強いジニーとどこか危なっかしいハリーとはいいカップルなんじゃないかなと思います。別れちゃったけどね。
この巻ではハリーは最初からスネイプやマルフォイに対して疑心満々です。ロンやハー子がうんざりするくらいです。今回にかぎってはその疑いはけっこう正しいのですけれど、それはそうとしてエンジン全開すぎです暴走ハリー。
ルーピンに「君はスネイプを憎みたいんだね」と言われてしまうくらいです。
ただ、その疑いは周囲にはあまり受け止めてもらえません。それはこれまでのハリーがいつも彼らを疑いまくっているからある意味狼少年になってしまったことからでしょう。しかしハリーにしてもいつも真剣に彼らを疑っていますから、今回受け止められなくてもある意味自分のせいですね。(内心で怒ったりダンブルドアにくってかかってましたけど)
そしてダンブルドアの死に、ハリーは静かに決意します。ヴォルデモードと対決するたびの途中でスネイプに会ったなら、僕にとってはありがたいことであいつにとってはありがたくないことになる、と。
あと、特筆すべきはロンに対するフェリクス・フェリシスを使った頭脳プレイと、スラグホーンから記憶をもらったことに現れてるハリーの賢さです。
記憶に関してはフェリクスのおかげともいえるのですが、言葉の使いかたや説得の仕方はハリーが自ら考えて発したもの。相手の心にいかに訴えかけて目的を果たすか、その点においてハリーはとても優れているのではないかと思うのです。
ロンを鼓舞するためのハーマイオニーの行動も計算に入れた作戦は完全に成功。これはクイディッチで鍛えた、それぞれの行動や性格を読んだ作戦ですよね。これまで実践系のDADAや飛行術といったものが得意と思われたハリーも、こういった心理的な賢さを備えているんだなと思いました。
魔法薬学での活躍は「半純血のプリンス」のおかげです。ハリー自身教科書の書き込みに頼ってハーマイオニーよりよい結果を生み出すことに罪悪感を感じたりしています。ですがさまざまな創意工夫をこらして魔法薬に取り組むプリンスに対し、次第に親しみをおぼえるようになってきます。ハリーは今まで無意識にスネイプ教授に対して憎しみというフィルターを通してみていたのですが、(そしてそれが教授の狙いでもあったのですが)教科書の件で、初めて素のスネイプに触れることになりました。セクタムセンプラを書き込んであることに対しては、親しいと思っていた人物に突然悪意を向けられたような悲しみを味わっています。これがきっかけで、ハリーのスネイプ教授に対する見方がほんの少し、変わったように感じます。
ハリーは蛇語と、ヴォルデモートとつながっているという特性を持っています。
血筋に関する謎やホークラックス、またスネイプとの対決も含めて7巻では更に波乱万丈な展開だと思いますが、ロンとハーマイオニーと3人でがんばって「しあわせ」を掴んでほしいと思います。
■人物考察2 ~セブルス・スネイプ~
彼は影の主人公であると思います。というかまず立場を明確にさせておきますと、私はスネイプ教授愛です。ええ。もちろんハリーにも愛です。ハリポタシリーズの影のテーマは教授とハリーとの和解であると思います。(いや、スネハリ的な意味ではなくても、最終的に彼らは認め合ってほしいものです)
そこでおさらい。
・スネイプはジェームズによって命を助けられた恩を息子のハリーを助けることで返そうとしている
・ヴォルデモート側とダンブルドア側のダブルエージェント
・非常に強力で賢い魔法使いのうちの一人
・スリザリン寮監
・理性的で論理的な性格
・6巻ではダンブルドアに向かってアバダ・ケダブラを唱える
私は彼がダンブルドアを殺してしまったと考えています。しかしそれは多くの方がそういっておられるように、あらかじめダンブルドアとそういった段取りをつけてあったのでしょう。ダンブルドアは自分の死の予感を感じ、帝王に対する切り札を用意して、然るべき時がきたならば生徒を守るために殺してくれるように頼んでいたのだと思います。それだからこそ「Sevrus...please...」という台詞になったのでは。
そのときのスネイプ教授の心中を考えるとたまりません。
ああ、スネイプ教授…
スネイプがここまでしてダンブルドアに従い、闇の帝王側に走り去ったのは、ひとつにはドラコ・マルフォイのためです。そしてダンブルドアのため。更に彼自身の計画のためであったのではないかと思っています。
マルフォイにはダンブルドアを殺せない、けれど殺さなければ帝王に罰を受ける。
ダンブルドアは死喰い人の手にかかって死ぬよりも信頼する人物の手にかかって死ぬことを望む。生徒を救うためならば彼は死を選ぶだろう。
よってスネイプはダンブルドアを殺してマルフォイを救った。
そして間違いなく、透明マントをかぶったハリーにも気がついていた。
ダンブルドアを殺したのはセブルス・スネイプであることが知られたとき、もうホグワーツにスネイプが帰る場所はないのです。帝王側に身を投じて裏切り者と呼ばれることを覚悟していたと思われるスネイプですが、ハリーの「臆病者!」には激昂しています。彼の心情を推し量るシーンです。この二人の言い争いも考えてみれば6年の年季が入っています。マルフォイ、ひとこともしゃべりません。(ダンブルドアの死にショックを受けていたのもあるでしょうが)
これらのことは、すべてスネイプの計画なのではないかと思います。
彼の最終目標とは、闇の帝王の下で栄華を極めることではなく、かといって彼を倒すことでもなく、「ハリーに倒される」ことなのではないかと思ってしまいます。
そのための長い長い道のり。その根拠は、
・ジェームズに対する命の借り
・予言の前半を帝王に教えてしまったことによる自責の念
・閉心術の訓練で知った、ハリーの暗い部分への共感
・ハリーが父親とは違う存在なのだと思い知ったこと
さらに、教授がリリーに関して一切コメントしないことと彼女が魔法薬学を得意としていたことから、スネイプはリリーに淡い思いを寄せていた(あるいは寄せ合っていた)という推理が加わります。
闇の陣営に与したことや、ポッター夫妻が自分のせいで死んでしまった過去は消えない。償いをしなければならない、だが何も知らないハリーを見れば、ジェームズとリリーを嫌でも思い出す。憎しみと後悔と、過去の思い出。
つまりスネイプは死に場所を探しているのです。
ハリーを助けることでジェームズに報いる。
ハリーを守ることでリリーに応える。
そしてハリーに殺されることで罪を償おうと思っているのではないでしょうか。
だからこそハリーに憎まれようとしているのではないでしょうか。
きっと最後までスネイプはハリーを欺き続けるでしょう。
悲しいかな、ハリーはいつそれに気がつくのか。
それでも私はハリーに人殺しはできないのではないかと思っています。
だから彼は、ハリーに殺されることはなくてもリリーがそうしたようにハリーをかばって死ぬのではないかと危惧しています。
■人物考察3 ~アルバス・ダンブルドア~
ついにハリーをはじめ多くの魔法使いを導き戦い続けてきた人物が死んでしまいました。彼の死生観を考えれば、分霊箱などでの復活はかんがえにくいので本当に彼は死んでしまったものと思います。(ただし、肖像画やペンシーブなどによるアドバイザー的な役割で登場するのではないでしょうか)
また、ハリーに愛の力を説き、予言に振り回されることなく自らの足で立ち向かうことを教えたダンブルドアは、本当にハリーにとって大きな存在だったおもいます。
ダンブルドアは偉大な魔法使いです。けれど彼の人生においてはヴォルデモートやスネイプといった生徒たちが闇に堕ちてゆくのを止められなかったという後悔があります。ヴォルデモートを止めることは彼の目標であり、けじめであったことでしょう。
しかし自分の命をかけた分霊箱破壊に際し、もはや死がすぐ隣にあることにきがついていたダンブルドア。できればヴォルデモートを自ら倒したいが、時間がない。そこで嫌がるスネイプに頼み込み、尊厳ある死をのぞんでいます。この点において彼は我がままで残酷です。
しかしそのおかげで死の瞬間、彼は不幸ではなかったのではないでしょうか。
対ヴォルデモートへのふたつの切り札をすでに放っていたのですから。
ハリーに対する愛情と、そのハリーに全幅の信頼を寄せられていたこと、ハリーがすでに一人前の魔法使いになりつつあるという安心は彼の人生の最後の瞬間において、とても大きな心の支えになったと思います。
■人物考察4 ~ドラコ・マルフォイ~
彼は当初もう少し重要人物になるのではないかと思っていましたが、教授にすっかりおかぶを取られてしまったようなゲフゲフゴホン。まるでスリザリンを代表するような性格と行動を取る彼のキャラクターは、5巻まではそれでも高慢でプライドが高くスネイプを尊敬する少年、という位置にいました。ですが6巻での試練はマルフォイにも成長を促します。少年ではいられないことを要求された彼の苦悩は、あるいはハリーよりも深かったのではないかと思います。
1巻で、ハリーに話しかけたマルフォイ。
その後5年間ハリーと対立し続けてきたマルフォイ。
マートルのトイレで泣いていたマルフォイ。
最後の最後にダンブルドアを殺せなかったマルフォイ。
どれが彼の本当の姿なのでしょうか。
広大な屋敷と媚びる周囲、本当の友人の不在の中で暮らしてきたマルフォイは、ハリーにとってのロンやハーマイオニーをついに得ませんでした。
「スリザリンではもしかして 君はまことの友を得る」ハリーが組み分け帽子に言われた言葉を強く思い出してしまいます。
もしかして、違う未来があったのかもしれない。そう思わせる人物です。
そしてそんなドラコ・マルフォイをダンブルドアやスネイプ教授は死なせないでしょう。きっと彼は助かると思います。願わくは良い人生を。
■人物考察5 ~おまけの脇役たち~
あと気になる人物といえばはネビル・ロングボトム。DAで鍛えたし、56巻を通して最終戦闘に常に参加しているし、彼はきっと7巻で活躍します。思えばハリーとの友情も(ロン&ハー子に比べれば弱いけれど)かなり深いと思います。1巻でまだ頼りなく、失敗ばかりで自信を喪失していたネビルにハリーがかけた台詞はきっとネビルに大きな自信を与えたと思います。というかあのやりとり好き。
「君にはマルフォイが10人束になったって叶わない価値があるんだよ」(細部違うかも)
予言に当てはまり、もしかしたらハリーと立場が逆だったかもしれない少年。今後に期待します。
さらにルーナ・ラブグッド。この子かなり好きです。てか名前がすごいな。6巻では解説者として異彩を放っていましたね!しかし5巻を一度しか読んでない私は彼女のデータがあまりなくて、6巻登場時にがんばって思い出しました。DAメンバーとしてなんとなくネビルと仲良くなってほしい。個人的に。
■謎に関する考察1 ~ホークラックス(分霊箱)~
まずもって、これは超・禁じられた魔法です。
殺人によって魂を引き裂き、ものにその魂をこめる呪文で完成します。
目的は分霊箱の作成によって不死に近い存在になること。ヴォルデモートは7つに魂を分けることで強力に不死を達成しようとしていました。
6つの分霊箱は、ダンブルドアの推理によれば、
①トム・リドルの日記(破壊済み)
②マールヴォロの指輪(破壊済み)
③スリザリンのロケット(R.A.Bによって盗難)
④ハッフルパフのカップ(行方不明)
⑤レイブンクローorグリフィンドールゆかりの品(行方不明)
⑥ナギニ(ヴォルデモートの傍)
ではないかということです。おそらく帝王としては⑥はナギニではなくレイブンクローorグリフィンドールゆかりの品にしたかったことでしょうか、ハリーを殺して分霊箱を作ろうとしたときに自らが弱体化してしまったことでナギニを選んだのではないかというのがダンブルドアの推理です。
ここで問題になってくるのが、ダンブルドアの推理は果たして正解なのか?(あるいは本当のことを話したのか?)という疑問です。
つまり⑤はレイブンクローの品で分霊箱を作った上で、予言の対象であるハリーを殺して⑥のグリフィンドールの品に分霊箱を作り、6個の分霊箱を完成させようとしていたのではないかということです。
そしてもしかすると、ハリーの傷跡はホークラックスによるものではないのか…?
■謎に関する考察2 ~ハリーは最後のホークラックスなのか~
この説で気になるのは、
・アバダ・ケダブラでは通常傷はつかない
・ハリーとヴォルデモートの意識と能力の共有(一方通行か、共有かで解釈は変わります)
・リリー・エヴァンズの家系の謎
・ヴォルデモートがリリーに「どけ、じゃまだ」と言っており殺そうとはしていないこと
・予言の相手を分霊箱にすることで、「一方を殺さぬ限り他方は生きられぬ」を実現しにくくしたのではないか
以上を考えるとハリー=最後の分霊箱であるという説が濃厚になってきます。
この場合の流れとしては、
→ハリーを殺そうとしたときにリリーの護りが呪文を跳ね返し、ヴォルデモートは死に追い込まれそうになる
→咄嗟に7つめの分霊箱の完成を願う
→リリーorジェームズを使ってハリーを分霊箱にしてしまった
→消滅
でしょうか。この説の弱いところは、
・ヴォルデモートがたとえ咄嗟の思いだったとしても他人に自分の魂のかけらを移す(=依存する)だろうか?
・ハリーを何度も殺そうとしている(自分の分霊を殺すか?)
・ダンブルドアはナギニではないかと推理していた(否定はしていない)
でしょうか。一番目の理由による疑問が私の中ではもっとも大きいところです。
しかし彼自身が15年間弱体化したまま分霊箱のおかげでかろうじて生きていたとき、ハリーを分霊箱にできた自信(というか自覚)はなかったのではないでしょうか。だからこそ4巻でハリーを殺そうとしているし、あるいはハリーを殺して分霊箱を作り直すつもりだったのかもしれません。
いずれにせよ、この場合はヴォルデモートとハリーの死によって物語が終わることになるでしょう。救われねえー。(いや、物語としてはきれいな終わり方だと思いますよ?アリです。でも児童文学にこのラストはけっこう重い…)
でも児童文学を飛び出してるってJKRさんどっかで言ってた気もするしな。
もちろんハリーの傷跡はただ強力な魔法を返したときについた傷だとか、ヴォルデモートの一部が流れ込んだときの傷だという説にも信憑性があります。
だからJKRさんの「7巻では主要登場人物のうち2人死ぬ」っていうのは
ヴォルデモート&ハリー
ヴォルデモート&スネイプ
のどちらかが濃厚だと思っています。この2人の解釈も分かれるところで、ヴォルデモートを除いて2人だったとしたら、それはハリー&スネイプじゃないかと思います…なんか一番のバッドエンドだわ…
7巻を待っています。
(ハリー・ポッターと謎のプリンス 上・下 / J.K.ローリング作 松岡佑子訳 / 静山社 / 2006年5月 )
・ハリーはシリウスの死にひどく落ち込んでいる
・スネイプ先生の「破れぬ誓い」
・ダンブルドアは登場時から何やら傷を抱えている様子
・マルフォイの不審な行動
・魔法薬学にスラグホーン先生就任、DADAにスネイプ先生就任(ついに!)
・「半純血のプリンス」の教科書
・ダンブルドアの個人授業にて、ヴォルデモートの生い立ちや少年期を知るハリー
・ジニーとの恋
・ホークラックス(分霊箱)の存在と謎
・そしてダンブルドアの死の夜・・・
盛りだくさんな印象ですが、4・5巻に比べハリーはとても精神的に成長した印象です。特にラストシーン近くではもう守ってくれる大人がいないこと、いてはいけない(一人で立たなくてはならない)ことを悟り、戦うことを決意しています。
謎の多い巻でもあり、7巻へとつながる重要な巻。ここで出てきた謎はとても多く、伏線もおそらくいっぱいでしょう。
■人物考察1 ~ハリー・ポッター~
まずもって大人になったね、ハリー…! ならざるを得なかったというのが正しいかもしれません。身近な人の死があまりにも多いハリーは、「普通のしあわせ」を感じてもらいたい人物トップです。
今回、彼はクイディッチのキャプテンに選ばれています。ここでハーマイオニーの台詞
「まあ、ハリーったら、しょうがないわね」
ハーマイオニーが今度は突然苛立った。
「クイディッチが人気なんじゃないわ。あなたよ! あなたがこんなに興味をそそったことはないし、率直に言って、こんなにセクシーだったことはないわ」
(6巻第11章P330より)
以下、ハリーがこれまでヴォルデモードと対決してきたことやそのたびに生き残ったこと、5巻において魔法省の迫害にも耐え抜いたこと、更にハリーの背が高くなったことを指摘するシーン、かなり好きです。暑くなるハリーと隣のロンの反応も可愛い。
彼女はかなり他の二人よりも早熟ですから、自意識の低いハリーにずばっと言ってのけることができるのでしょうね。かっこいい!しかし彼女の口からこんなにはっきりハリーの魅力が語られたのにはびっくりしました。それだけハリーに対して友達意識が強いってことでしょうかね。そんなことロンには言えないもんね。
ロンはロンでクリスマスの頃の態度はひどすぎます。ハー子可哀想…
そしてハリーとジニーの恋はなんか唐突だなあという印象でした。でもだってジニーさん、他の男の子と今までめっちゃいちゃついてましたやん!「糊付けされたように」って表現に思わず笑ってしまった。でもまあ美人だという話だし、可愛くて強いジニーとどこか危なっかしいハリーとはいいカップルなんじゃないかなと思います。別れちゃったけどね。
この巻ではハリーは最初からスネイプやマルフォイに対して疑心満々です。ロンやハー子がうんざりするくらいです。今回にかぎってはその疑いはけっこう正しいのですけれど、それはそうとしてエンジン全開すぎです暴走ハリー。
ルーピンに「君はスネイプを憎みたいんだね」と言われてしまうくらいです。
ただ、その疑いは周囲にはあまり受け止めてもらえません。それはこれまでのハリーがいつも彼らを疑いまくっているからある意味狼少年になってしまったことからでしょう。しかしハリーにしてもいつも真剣に彼らを疑っていますから、今回受け止められなくてもある意味自分のせいですね。(内心で怒ったりダンブルドアにくってかかってましたけど)
そしてダンブルドアの死に、ハリーは静かに決意します。ヴォルデモードと対決するたびの途中でスネイプに会ったなら、僕にとってはありがたいことであいつにとってはありがたくないことになる、と。
あと、特筆すべきはロンに対するフェリクス・フェリシスを使った頭脳プレイと、スラグホーンから記憶をもらったことに現れてるハリーの賢さです。
記憶に関してはフェリクスのおかげともいえるのですが、言葉の使いかたや説得の仕方はハリーが自ら考えて発したもの。相手の心にいかに訴えかけて目的を果たすか、その点においてハリーはとても優れているのではないかと思うのです。
ロンを鼓舞するためのハーマイオニーの行動も計算に入れた作戦は完全に成功。これはクイディッチで鍛えた、それぞれの行動や性格を読んだ作戦ですよね。これまで実践系のDADAや飛行術といったものが得意と思われたハリーも、こういった心理的な賢さを備えているんだなと思いました。
魔法薬学での活躍は「半純血のプリンス」のおかげです。ハリー自身教科書の書き込みに頼ってハーマイオニーよりよい結果を生み出すことに罪悪感を感じたりしています。ですがさまざまな創意工夫をこらして魔法薬に取り組むプリンスに対し、次第に親しみをおぼえるようになってきます。ハリーは今まで無意識にスネイプ教授に対して憎しみというフィルターを通してみていたのですが、(そしてそれが教授の狙いでもあったのですが)教科書の件で、初めて素のスネイプに触れることになりました。セクタムセンプラを書き込んであることに対しては、親しいと思っていた人物に突然悪意を向けられたような悲しみを味わっています。これがきっかけで、ハリーのスネイプ教授に対する見方がほんの少し、変わったように感じます。
ハリーは蛇語と、ヴォルデモートとつながっているという特性を持っています。
血筋に関する謎やホークラックス、またスネイプとの対決も含めて7巻では更に波乱万丈な展開だと思いますが、ロンとハーマイオニーと3人でがんばって「しあわせ」を掴んでほしいと思います。
■人物考察2 ~セブルス・スネイプ~
彼は影の主人公であると思います。というかまず立場を明確にさせておきますと、私はスネイプ教授愛です。ええ。もちろんハリーにも愛です。ハリポタシリーズの影のテーマは教授とハリーとの和解であると思います。(いや、スネハリ的な意味ではなくても、最終的に彼らは認め合ってほしいものです)
そこでおさらい。
・スネイプはジェームズによって命を助けられた恩を息子のハリーを助けることで返そうとしている
・ヴォルデモート側とダンブルドア側のダブルエージェント
・非常に強力で賢い魔法使いのうちの一人
・スリザリン寮監
・理性的で論理的な性格
・6巻ではダンブルドアに向かってアバダ・ケダブラを唱える
私は彼がダンブルドアを殺してしまったと考えています。しかしそれは多くの方がそういっておられるように、あらかじめダンブルドアとそういった段取りをつけてあったのでしょう。ダンブルドアは自分の死の予感を感じ、帝王に対する切り札を用意して、然るべき時がきたならば生徒を守るために殺してくれるように頼んでいたのだと思います。それだからこそ「Sevrus...please...」という台詞になったのでは。
そのときのスネイプ教授の心中を考えるとたまりません。
スネイプはほんの一瞬、ダンブルドアを見つめた。その非常な顔の皺に、嫌悪と憎しみが刻まれていた。(6巻27章P422より)
ああ、スネイプ教授…
スネイプがここまでしてダンブルドアに従い、闇の帝王側に走り去ったのは、ひとつにはドラコ・マルフォイのためです。そしてダンブルドアのため。更に彼自身の計画のためであったのではないかと思っています。
マルフォイにはダンブルドアを殺せない、けれど殺さなければ帝王に罰を受ける。
ダンブルドアは死喰い人の手にかかって死ぬよりも信頼する人物の手にかかって死ぬことを望む。生徒を救うためならば彼は死を選ぶだろう。
よってスネイプはダンブルドアを殺してマルフォイを救った。
そして間違いなく、透明マントをかぶったハリーにも気がついていた。
ダンブルドアを殺したのはセブルス・スネイプであることが知られたとき、もうホグワーツにスネイプが帰る場所はないのです。帝王側に身を投じて裏切り者と呼ばれることを覚悟していたと思われるスネイプですが、ハリーの「臆病者!」には激昂しています。彼の心情を推し量るシーンです。この二人の言い争いも考えてみれば6年の年季が入っています。マルフォイ、ひとこともしゃべりません。(ダンブルドアの死にショックを受けていたのもあるでしょうが)
これらのことは、すべてスネイプの計画なのではないかと思います。
彼の最終目標とは、闇の帝王の下で栄華を極めることではなく、かといって彼を倒すことでもなく、「ハリーに倒される」ことなのではないかと思ってしまいます。
そのための長い長い道のり。その根拠は、
・ジェームズに対する命の借り
・予言の前半を帝王に教えてしまったことによる自責の念
・閉心術の訓練で知った、ハリーの暗い部分への共感
・ハリーが父親とは違う存在なのだと思い知ったこと
さらに、教授がリリーに関して一切コメントしないことと彼女が魔法薬学を得意としていたことから、スネイプはリリーに淡い思いを寄せていた(あるいは寄せ合っていた)という推理が加わります。
闇の陣営に与したことや、ポッター夫妻が自分のせいで死んでしまった過去は消えない。償いをしなければならない、だが何も知らないハリーを見れば、ジェームズとリリーを嫌でも思い出す。憎しみと後悔と、過去の思い出。
つまりスネイプは死に場所を探しているのです。
ハリーを助けることでジェームズに報いる。
ハリーを守ることでリリーに応える。
そしてハリーに殺されることで罪を償おうと思っているのではないでしょうか。
だからこそハリーに憎まれようとしているのではないでしょうか。
きっと最後までスネイプはハリーを欺き続けるでしょう。
悲しいかな、ハリーはいつそれに気がつくのか。
それでも私はハリーに人殺しはできないのではないかと思っています。
だから彼は、ハリーに殺されることはなくてもリリーがそうしたようにハリーをかばって死ぬのではないかと危惧しています。
■人物考察3 ~アルバス・ダンブルドア~
ついにハリーをはじめ多くの魔法使いを導き戦い続けてきた人物が死んでしまいました。彼の死生観を考えれば、分霊箱などでの復活はかんがえにくいので本当に彼は死んでしまったものと思います。(ただし、肖像画やペンシーブなどによるアドバイザー的な役割で登場するのではないでしょうか)
また、ハリーに愛の力を説き、予言に振り回されることなく自らの足で立ち向かうことを教えたダンブルドアは、本当にハリーにとって大きな存在だったおもいます。
ダンブルドアは偉大な魔法使いです。けれど彼の人生においてはヴォルデモートやスネイプといった生徒たちが闇に堕ちてゆくのを止められなかったという後悔があります。ヴォルデモートを止めることは彼の目標であり、けじめであったことでしょう。
しかし自分の命をかけた分霊箱破壊に際し、もはや死がすぐ隣にあることにきがついていたダンブルドア。できればヴォルデモートを自ら倒したいが、時間がない。そこで嫌がるスネイプに頼み込み、尊厳ある死をのぞんでいます。この点において彼は我がままで残酷です。
しかしそのおかげで死の瞬間、彼は不幸ではなかったのではないでしょうか。
対ヴォルデモートへのふたつの切り札をすでに放っていたのですから。
ハリーに対する愛情と、そのハリーに全幅の信頼を寄せられていたこと、ハリーがすでに一人前の魔法使いになりつつあるという安心は彼の人生の最後の瞬間において、とても大きな心の支えになったと思います。
■人物考察4 ~ドラコ・マルフォイ~
彼は当初もう少し重要人物になるのではないかと思っていましたが、教授にすっかりおかぶを取られてしまったようなゲフゲフゴホン。まるでスリザリンを代表するような性格と行動を取る彼のキャラクターは、5巻まではそれでも高慢でプライドが高くスネイプを尊敬する少年、という位置にいました。ですが6巻での試練はマルフォイにも成長を促します。少年ではいられないことを要求された彼の苦悩は、あるいはハリーよりも深かったのではないかと思います。
1巻で、ハリーに話しかけたマルフォイ。
その後5年間ハリーと対立し続けてきたマルフォイ。
マートルのトイレで泣いていたマルフォイ。
最後の最後にダンブルドアを殺せなかったマルフォイ。
どれが彼の本当の姿なのでしょうか。
広大な屋敷と媚びる周囲、本当の友人の不在の中で暮らしてきたマルフォイは、ハリーにとってのロンやハーマイオニーをついに得ませんでした。
「スリザリンではもしかして 君はまことの友を得る」ハリーが組み分け帽子に言われた言葉を強く思い出してしまいます。
もしかして、違う未来があったのかもしれない。そう思わせる人物です。
そしてそんなドラコ・マルフォイをダンブルドアやスネイプ教授は死なせないでしょう。きっと彼は助かると思います。願わくは良い人生を。
■人物考察5 ~おまけの脇役たち~
あと気になる人物といえばはネビル・ロングボトム。DAで鍛えたし、56巻を通して最終戦闘に常に参加しているし、彼はきっと7巻で活躍します。思えばハリーとの友情も(ロン&ハー子に比べれば弱いけれど)かなり深いと思います。1巻でまだ頼りなく、失敗ばかりで自信を喪失していたネビルにハリーがかけた台詞はきっとネビルに大きな自信を与えたと思います。というかあのやりとり好き。
「君にはマルフォイが10人束になったって叶わない価値があるんだよ」(細部違うかも)
予言に当てはまり、もしかしたらハリーと立場が逆だったかもしれない少年。今後に期待します。
さらにルーナ・ラブグッド。この子かなり好きです。てか名前がすごいな。6巻では解説者として異彩を放っていましたね!しかし5巻を一度しか読んでない私は彼女のデータがあまりなくて、6巻登場時にがんばって思い出しました。DAメンバーとしてなんとなくネビルと仲良くなってほしい。個人的に。
■謎に関する考察1 ~ホークラックス(分霊箱)~
まずもって、これは超・禁じられた魔法です。
殺人によって魂を引き裂き、ものにその魂をこめる呪文で完成します。
目的は分霊箱の作成によって不死に近い存在になること。ヴォルデモートは7つに魂を分けることで強力に不死を達成しようとしていました。
6つの分霊箱は、ダンブルドアの推理によれば、
①トム・リドルの日記(破壊済み)
②マールヴォロの指輪(破壊済み)
③スリザリンのロケット(R.A.Bによって盗難)
④ハッフルパフのカップ(行方不明)
⑤レイブンクローorグリフィンドールゆかりの品(行方不明)
⑥ナギニ(ヴォルデモートの傍)
ではないかということです。おそらく帝王としては⑥はナギニではなくレイブンクローorグリフィンドールゆかりの品にしたかったことでしょうか、ハリーを殺して分霊箱を作ろうとしたときに自らが弱体化してしまったことでナギニを選んだのではないかというのがダンブルドアの推理です。
ここで問題になってくるのが、ダンブルドアの推理は果たして正解なのか?(あるいは本当のことを話したのか?)という疑問です。
つまり⑤はレイブンクローの品で分霊箱を作った上で、予言の対象であるハリーを殺して⑥のグリフィンドールの品に分霊箱を作り、6個の分霊箱を完成させようとしていたのではないかということです。
そしてもしかすると、ハリーの傷跡はホークラックスによるものではないのか…?
■謎に関する考察2 ~ハリーは最後のホークラックスなのか~
この説で気になるのは、
・アバダ・ケダブラでは通常傷はつかない
・ハリーとヴォルデモートの意識と能力の共有(一方通行か、共有かで解釈は変わります)
・リリー・エヴァンズの家系の謎
・ヴォルデモートがリリーに「どけ、じゃまだ」と言っており殺そうとはしていないこと
・予言の相手を分霊箱にすることで、「一方を殺さぬ限り他方は生きられぬ」を実現しにくくしたのではないか
以上を考えるとハリー=最後の分霊箱であるという説が濃厚になってきます。
この場合の流れとしては、
→ハリーを殺そうとしたときにリリーの護りが呪文を跳ね返し、ヴォルデモートは死に追い込まれそうになる
→咄嗟に7つめの分霊箱の完成を願う
→リリーorジェームズを使ってハリーを分霊箱にしてしまった
→消滅
でしょうか。この説の弱いところは、
・ヴォルデモートがたとえ咄嗟の思いだったとしても他人に自分の魂のかけらを移す(=依存する)だろうか?
・ハリーを何度も殺そうとしている(自分の分霊を殺すか?)
・ダンブルドアはナギニではないかと推理していた(否定はしていない)
でしょうか。一番目の理由による疑問が私の中ではもっとも大きいところです。
しかし彼自身が15年間弱体化したまま分霊箱のおかげでかろうじて生きていたとき、ハリーを分霊箱にできた自信(というか自覚)はなかったのではないでしょうか。だからこそ4巻でハリーを殺そうとしているし、あるいはハリーを殺して分霊箱を作り直すつもりだったのかもしれません。
いずれにせよ、この場合はヴォルデモートとハリーの死によって物語が終わることになるでしょう。救われねえー。(いや、物語としてはきれいな終わり方だと思いますよ?アリです。でも児童文学にこのラストはけっこう重い…)
でも児童文学を飛び出してるってJKRさんどっかで言ってた気もするしな。
もちろんハリーの傷跡はただ強力な魔法を返したときについた傷だとか、ヴォルデモートの一部が流れ込んだときの傷だという説にも信憑性があります。
だからJKRさんの「7巻では主要登場人物のうち2人死ぬ」っていうのは
ヴォルデモート&ハリー
ヴォルデモート&スネイプ
のどちらかが濃厚だと思っています。この2人の解釈も分かれるところで、ヴォルデモートを除いて2人だったとしたら、それはハリー&スネイプじゃないかと思います…なんか一番のバッドエンドだわ…
7巻を待っています。
(ハリー・ポッターと謎のプリンス 上・下 / J.K.ローリング作 松岡佑子訳 / 静山社 / 2006年5月 )
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