SSS 20のお題 ホラー系より
※本館で使用予定です
05闇に向かう道
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05闇に向かう道
青年は夜道を一人歩いていた。危険があることは百も承知、それでも家の中に閉じこもってばかりいるわけにもいかない。
青年はありふれたモノトーンのジャケットの上下を着て足早に歩いていた。何かから逃げるように、追われるようにその足先は港へと向かってゆく。
暗い夜だった。空は薄い雲に覆われて月星の気配はない。都会の灯りは人工的な明るさをまき散らすが、その本質的な暗さは生き物を怯えさせる性質を持っていた。
青年の後を影が追う。それは青年自身の影でありそうでないときもあった。
青年は今の状況を比較的正確に把握していた。自分がどこに向かっているかも、そしてどうなるのかもわかっていて足を止めなかった。あるいは、止められなかったのかもしれない。影の存在が今やますます迫っていたためだ。
コンテナからコンテナへと移動するのをやめ、青年はじっと息を潜める。潮騒が近く、汽笛は時折風に混じって青年の耳に届いた。
よくよく見れば青年の服はすでにところどころ破れ血がにじんでいた。青年の顔にも疲れが隠せない。長い間追われたきた果てなのかもしれなかった。
狭いコンテナ群は逃げるのには適さない。
青年は黒い服をまとった女に銃口を向けられていた。
背後は黒い海。
汽笛が闇を貫いたとき、青年はもうそこに立っていなかった。
女もまた。
そこは、かつて宮野明美が命を落とした場所であった。
青年はありふれたモノトーンのジャケットの上下を着て足早に歩いていた。何かから逃げるように、追われるようにその足先は港へと向かってゆく。
暗い夜だった。空は薄い雲に覆われて月星の気配はない。都会の灯りは人工的な明るさをまき散らすが、その本質的な暗さは生き物を怯えさせる性質を持っていた。
青年の後を影が追う。それは青年自身の影でありそうでないときもあった。
青年は今の状況を比較的正確に把握していた。自分がどこに向かっているかも、そしてどうなるのかもわかっていて足を止めなかった。あるいは、止められなかったのかもしれない。影の存在が今やますます迫っていたためだ。
コンテナからコンテナへと移動するのをやめ、青年はじっと息を潜める。潮騒が近く、汽笛は時折風に混じって青年の耳に届いた。
よくよく見れば青年の服はすでにところどころ破れ血がにじんでいた。青年の顔にも疲れが隠せない。長い間追われたきた果てなのかもしれなかった。
狭いコンテナ群は逃げるのには適さない。
青年は黒い服をまとった女に銃口を向けられていた。
背後は黒い海。
汽笛が闇を貫いたとき、青年はもうそこに立っていなかった。
女もまた。
そこは、かつて宮野明美が命を落とした場所であった。
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